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九州完乗の日

 時速約300Kmの強い向かい風のため、日本航空2431便宮崎行きのエンブラエルE170型ジェット旅客機は、約5分遅れて宮崎空港に着陸した。大阪伊丹空港から、1時間強の快適な空の旅だった。

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 平成24年2月11日9時10分、宮崎空港の天気は快晴、気温は摂氏4度だった。
 今日はここから、JR宮崎空港線で南宮崎に出て、特急「きりしま9号」で鹿児島中央を目指し、そこから九州新幹線「さくら566号」で熊本まで行く予定だ。熊本では、別行動をしている友人たちが待っているはずである。

 空港内の売店をひやかしながら時間を潰し、9時30分すぎにJR宮崎空港駅に出向いた。出向いたと言っても、空港ビルを出たところにモノレールの駅みたいな高架駅があるので、すぐに着くのだが。

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 晴天の下にのんびりと広がる宮崎空港の滑走路を見晴らす、行き止まり式1面2線のホームを2本の列車が埋めていた。一本は到着したばかりの特急列車、もう一本はこれから乗る延岡行きの普通列車だ。特急列車の方は「ハイパーサルーン」と呼ばれた名車両783系電車で、スマートな姿をしている。一方の普通列車も、「サンシャイン713系」と呼ばれる派手なカラーリングが施された電車で、JR九州の車両はどれも魅力的だ。

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 普通列車に乗り込んでみると、内装もビビッドカラーの派手なもの。普段乗っているJR西日本の列車の内装がビジネスライクなそっけないものだけに、じつに新鮮だ。

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 9時40分、定刻に宮崎空港を発車した普通列車は、ほどなく田園風景の中の小駅田吉に停車した。これで、今日はるばる宮崎まで出向いてきた目的、1駅わずか1.4KmのJR宮崎空港線の乗車が完了した。

 ここ田吉は、JR日南線との分岐駅で、たくさんの若い女性が下車した。ワンマン運転中の運転手と団体の幹事らしき女性が、なにやら相談をしている。車外なので内容は分からないが、おそらく日南線への乗換えの件だろう。なにせ、次の日南線志布志行きが来るのは、約1時間後だ。せめて、次の南宮崎まで行けば時間を潰す場所もあるだろうが、ここ田吉駅周辺は畑が広がるばかりである。
 結局、彼女たちを残したまま、列車は出発した。
 彼女たちの目的地がどこなのかは知らないが、いっそのこと、宮崎空港から他の交通手段を使った方が良かったのではないか。そこまでして宮崎空港線に乗る理由もあるまいに、と自分のことは棚にあげて私は思った。

 次の南宮崎で、途中下車する。鹿児島中央行きの特急「きりしま9号」の発車まで、約40分の待ち時間がある。
 適当に駅前をぶらついて時間を潰し、空腹を満たすために地元宮崎のパン屋ミカエル堂の「ジャリパン」という正体不明の菓子パンを購入してから、駅に戻った。
 祝日のはずだが、町には制服を着込んだ女子中学生がたくさん歩いていた。南国宮崎の風は、ほんのりと暖かかった。

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「きりしま9号」は、経産省のグッドデザイン賞も受賞した787系電車で、ロボットアニメのメカのような姿をしている。車内はかなり豪華な内装で、特急料金に見合う座席だな、と思う。
 しかし、たった4両しか連結していない列車は7割がた空席で、都市間輸送の戦力にはなっていないようだ。車両に刻まれた「INTERCITY 787 AROUND THE KYUSHU」のロゴが、さびしそうだった。

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 車内で封を切った「ジャリパン」は、柔らかいコッペパンにバタークリームと粒の残った砂糖を挟んだ素朴なもので、口のなかにじゃりじゃりとした食感が残った。

「きりしま9号」は、およそ人工物の見えない山間部をのんびりと走る。体感での速度は時速60Kmくらいだろう。
 DOCOMOのFOMA携帯の画面に、「圏外」という表示が出て久しい頃、航空機の客室乗務員のような若い女性の車内販売員がワゴンを押してやってきた。
 こんなに乗客が少ないのに、車内販売員が乗り組んでいるのには感心した。だから、というわけではないが、彼女から「龍馬薩摩路紀行」という弁当を購入する。
 終点の西鹿児島駅で、九州新幹線の「さくら566号」に乗り継ぐ予定だが、絶妙のプランニングの成果として、乗り換え時間は7分しかない。鹿児島中央で駅弁を買えればいいのだが、その余裕はないだろう。ちょうど、お昼も近い。
「小さいお弁当ですが、よろしいですか」とこちらのお腹の具合まで心配してくれるのは、お客が少ないからか、彼女が親切だからかは定かでない。

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 柔らかく煮込んだ豚肉や鶏肉が美味しい弁当を平らげた頃、「きりしま9号」は錦江湾沿いを走っていた。冬日の下、油を流したようにのっぺりと広がる水面の向こうに、灰色と褐色の煙を吐き出す桜島が見えていた。

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 12時23分、「きりしま9号」は、終点、鹿児島中央駅に到着した。
 この駅は、かつては西鹿児島駅と呼ばれていて、九州内の特急列車や本州からの夜行寝台列車のターミナル駅として賑わっていた。新幹線開業に合わせて駅名を鹿児島中央に改称してしまったが、西鹿児島という駅名の方が旅情を誘うと思う。
 いずれにせよ、今日は旅情に浸っている余裕はない。到着前からデッキで待機しておいて、ドアが開くと同時に飛び出し、エスカレーターを一気に駆け上がる。折れ曲がった矢印に従って、一走り。新幹線改札を通過する。時計を確認すると、12時25分だった。あとは、ホームに昇るエスカレーターに乗るだけだ。

 あらためてあたりを見回すと、新幹線コンコースは小ぶりながらも充実したものだった。
 桜島を描いたステンドグラスからは、色とりどりの光が差し込み、ベンチを七色に染めている。七段飾りの雛壇もあり、お内裏さまとお雛さまが、優雅な笑顔でベンチに座った客を見下ろしていた。
 駅弁売り場には、手持ち無沙汰に売り子が待機していたが、すでに満腹なので用事はない。

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 することもないので、ホームに昇る。
 桜島に向かって行き止まりになった2面4線のホームには、新大阪行き「さくら566号」が青磁色の車体を横たえていた。

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 定刻に鹿児島中央を発車すると、「さくら566号」はすぐにトンネルに入った。
 相当な速度を出しているはずだが、乗り心地は極上だ。広くて座り心地のいいシート、落ち着いた色目の木材を多用したインテリアのおかげで、列車に乗っているというより、ホテルのラウンジに居るような気分になり、その効能で定期的に睡魔が襲ってくる。熊本までは1時間ほどだし、居眠りなどしていて乗り越すと、あっというまに博多あたりまで運ばれかねない。なにより、初乗り区間を眠ったままでは申し訳ない。
 コーヒーを飲み、車窓に目をこらすが、見えるのはトンネルの内壁ばかりで、眠っているのと大差なかった。

 川内を出ると、車窓に南九州の山並みが連なり、それが田園風景に変わり、町並みが広がって「さくら566号」は、13時19分、熊本に到着した。
 明日、帰路で熊本から博多までの九州新幹線に乗車すれば、九州内の定期列車を運行している鉄道路線はすべて乗り終えることになる。

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 これで、今日の目的はすべて終わったような気がしたが、携帯が震えて、メールが届いたことを知らせた。先乗りしている友人たちからのメールだった。
 思えば、いちばん主要な目的はこれからなのだった。
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