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宇宙戦艦ヤマト・復活篇

 さて、前回に引き続き、宇宙戦艦ヤマトのネタである。
 今回は、2009年12月に公開された劇場用長編アニメーション映画「宇宙戦艦ヤマト復活篇」について、いろいろ書いて見たい。毎度のことだが、多分にストーリーのネタバレを含むので、未見の人はご注意下さい。

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 この作品のストーリーは、今まで公開された映画版4作品と、かなり趣を異にしている。
 西暦2220年。太陽系は迫り来る移動性ブラックホールにより、滅亡の危機に瀕していた。
 地球人類は、2万7000千光年離れた可住惑星アマールの衛星に移住することを決定。その移民船団を護衛する任務に、改修された宇宙戦艦ヤマトが当たり、正体不明の敵を前に不退転の奮戦を繰り広げる。
 移民船団を無事アマールに送り届けた古代進艦長らヤマトのクルーは、敵が、地球人類を侵略者だと看做す星団連合であり、その主力となるSUS国が強圧的で傍若無人な存在であることを知り、連合に組していた他の国家とともに反攻を開始する。さらに、SUS国の正体が、太陽系や地球を襲うブラックホールを操る異次元生命体の手先であることを知り、地球を救うために移動性ブラックホールを撃滅すべく立ち向かう。
 さて、このストーリーだが、なにやら特定の思想を表現すべく、どこかで見聞きしたような話しが、ご都合主義的にごちゃっと詰め込まれている感がある。原作者の思想や、今更のご都合主義的展開に対して、どうこう言うつもりはない。だが、宇宙戦艦ヤマトのストーリーの根幹にあるべきものは、かつての大戦で無用の長物扱いされ、日本を守ることができない無念を飲んで沈んだ戦艦大和が、遠い未来に人類存亡の危機を救う切り札として甦り、たった一隻で強大な敵に立ち向かい、最後には地球と人類を守るというロマンティシズムとカタルシスにあると思っている。だから、そこを外したストーリー展開では、そのテーマや主張の内容云々以前に、落第点をつけざるを得ない。こんな政治茶番劇みたいなちんけなストーリーなら、他でやってもらいたいと思うのである。

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 ストーリーだけでなく、キャラクターも描ききれていなかった。
 たとえば、この作品の主人公である古代進とその家族を見てみよう。古代進は家庭を放り出して辺境で貨物船の船長をやっていたが、政府の要請でヤマトの艦長に就任して出撃する。妻の古代雪は、第1次移船団の護衛艦隊司令官だったが、敵との交戦中に乗艦が被弾し行方不明になってしまう。そして、地球にはひとり娘の古代美雪が残されているという設定なのだが、本来ならストーリーのコアになりうるはず設定が、まったく活かされていないのだ。
 では、ヤマトのクルーたちはどうか。貨物船の相棒、第1次船団の生き残り、頭脳明晰な美少女、双子の機関士、戦闘機パイロット兼船医など面白そうな連中がいるが、それもストーリーには活かされていない。ひとりだけ例外はいるが、他の連中は、特攻要員と単なるモブキャラである。
 その他、アマール星の女王や家臣、敵のボスや将軍たちも、数だけは出てくるが、みんな端役や特攻要員であり、その存在意義が見出せない(ちなみにかつてデスラー総統を演じた声優が他のキャラで出てくるが、特攻要員のひとりという扱いでしかないのは残念なことだ)。
 劇場用作品で、描くべきテーマとキャラクターを絞り込まないと、こういう結果になりますよ、という反面教師のような作品になってしまっている。

 そんななかで、唯一の輝きを見せるのが、ヤマトのクルーの一人で、電算室のチーフを務める美少女、折原真帆である。このキャラクター、本来なら古代進の娘である古代美雪が担当すべきポジションを与えられていて、冴えない他のキャラを向こうにまわして大健闘を見せている。いわば、本作品のヒロインなのだが、前述のとおりキャラとしての描きこみが不足しているうえに、下手な演出も加わって意味不明な存在になってしまっている。
 具体的には、こうだ。
 折原真帆は、頭脳明晰でありながら朗らかで人当たりが良く、また美人でもある才色兼備な少女だ。クルーをはじめ、艦長の古代進も可愛がって傍においている(と言っても艦橋での席の話しですが)。
 物語のラストシーン、移動性ブラックホールの撃滅に成功して歓喜に沸く艦橋で、ただ一人、真帆の席だけが空いている。真帆は、移動性ブラックホール攻撃作戦の際に、第3艦橋の電算室で危険を顧みずに情報分析に当たっていた。その情報のおかげで攻撃は成功したが、真帆は大破した電算室で眠るように戦死していた、という演出だ。おまけに、救われた太陽系の惑星をバックにして、その安らかな死顔がアップにされる、というトドメの演出もある。

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 これは、まさしくヒロインとしての扱いであり、美少女の犠牲で地球が救われましたので皆さん泣いてください、という意図なのだろうか。ところが、作品の中でヒロインであるはずの真帆に関して、身を挺してまで地球を守りたい事情も、戦死することで悲嘆に暮れることになる誰かの存在も、ヤマトに乗り組み戦いに参加する意義や目的も、なにも描かれていないのだ。だから彼女に感情移入できないし、そんなヒロインが戦死したとしても、感動もしなければ涙も出ない。この演出は、意図も不明なら効果もないものだったと言わざるをえないのだ。
 真帆が普通に生き残っていれば、クルーたちの活躍で地球が救われたというカタルシスを味わえる場面なのに、それすら台無しにしてしまっている。あるいは、大破した第3艦橋から古代らクルーの命がけの活躍で救出されるというシナリオの方が、よほど感動的だと思うのは間違いだろうか。とまれ、そんな失敗演出のために、せっかくのヒロインを死なせたことに対して、怒りさえ覚えたほどだ(いや真帆に惚れたとか、そんなんじゃないですよ)。
 これは、同様に戦死していった他のキャラにも言えることで、いったい何のために彼らを犠牲にしたのか、と言いたくなる。もう少しキャラを、ひいては人の命を大切に描いて欲しいものだ。
 
 CGを活用したアニメーション自体は美麗だし、なによりまたヤマトの活躍を見せてくれたことには感謝するが、作品の出来として及第点は出せない。

 長文の上に酷評だったので、辟易された方のために、最後に朗報をひとつ。
 この作品には、公開されなかったもうひとつのエンディングがある。そのエンディングを採用し、全編を再構築したディレクターズカット版が来春に劇場公開され、ブルーレイDVDでも出るらしい。
 TOM-Fは、それに期待をかけているので、そこそこ感動できるくらいにはリメイクして貰いたい。

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