RSS

ニュートリノが光速の壁を超えても時間旅行はできない

 ニュートリノの伝播速度が光の速度を上回った、という衝撃的な実験結果が公表された。これは、ニュートリノが別のニュートリノに変化(振動)するという現象を研究することを目的としたCERN (欧州原子核研究機構)のOPERAという実験の副産物として発見されたものだという。
 これが事実なら、特殊相対性理論で示された帰結のうち、質量をもつ物質は光速を超えて移動することはできないということが覆されるものである。相対性理論は、現代物理学を支える最も重要な基本理論のひとつであるため、その理論に修正が必要となれば、これは大変なことであり、まさしく世紀の大発見だ。
 しかし、多くの科学者が実験結果に疑問を呈し、再検証を求めているのと同じく、私もこの実験結果にいささかの疑問を抱いている。もちろん私は物理の専門家などではなく、むしろこの手の理屈には弱い方に属する人間だから、具体的に問題点を指摘できるわけではない。しかも、優秀な科学者や研究者が何度も検証を繰り返して導き出した実験結果だから、なおさら私など門外漢の立ち入る隙は無いだろう。
 じつは、私の疑問点は、もっと素朴なものなのである。
 第1は、ニュートリノの速度を測定したCERNとGran Sassoの間の距離は730Km±20Cmという光速度からみるとほとんどゼロに近い距離であり、観測された速度の超過も1億分の6秒で光速の0.0025%というほぼゼロに近い差でしかないことなどから、観測に用いた機器の精度などで見落としはないのかということである。
 第2は、今回の実験ではニュートリノを地中深く「飛行」させており、光の速度の基準である真空中ではないので、そもそも条件が違うということである。
 私が上記2点の疑問を抱いた理由は、カミオカンデで捕捉されたSN1987Aのニュートリノバースト観測の記録との食い違いである。SN1987Aの観測時には、17~18万光年という距離の真空中を飛行した光とニュートリノが、ほぼ同時に地球に届いているのだ。もし、今回の発見が事実なら、SN1987Aからのニュートリノは光より約4年前に到達していなければならなかったはずである。
 そんなわけで、今後の検証が進むなかで、おそらくOPERA実験の結果は、何らかの修正がなされるのではないかと私は思っている。

 ところで、一連のニュースのなかに、ある学者が「理論上は、これで過去への時間旅行が可能になった」と語ったという記事があった。この説は、物質が光の速度に到達すると相対性理論の帰結によって時間が止まるから、もし物質が光の速度を超えた場合は時間が逆に流れることになるかもしれないという仮説が根拠なのだそうだ。
 これで人類の夢であるタイムマシンが建造できるかも、と言いたいところだが、事はそんなに単純ではない。仮に、ニュートリノ粒子は光速を超えているとしよう。しかも、0.0025%なんてケチな値ではなく、100%超過つまり2倍の速度があると想定してみる。
 地点Aから発射されたニュートリノは、観測点Bに1秒で到達した。その時点で、地点Aを「光学的」に観測すると、なんとまだ件のニュートリノは発射されていない。その1秒後に、ようやくニュートリノ発射を観測することができた。これは、原因と結果という因果関係が逆転したのだろうか。
 じつは、このニュートリノには科学者X氏が同乗して地点Aから観測点Bまで来ていた。X氏は、たしかに地点Aでニュートリノ発射の瞬間に立ち会っているのに、観測点Bに着いたときに「光学的」に観測したら、まだ地点Aからニュートリノは発射されておらず、X氏自身もまだ地点Aにいるのである。これは、X氏が1秒過去に時間旅行したのだろうか。
 答えは、いずれもNOである。理由は、常識的に考えればわかることだし、説明するまでもないだろう。
 ただ、速度が無限大を超過してマイナスになれば、あるいは時間を遡ることが出来るかもしれない。もっとも、時間だけを逆行すれば過去に旅行できるというのも、いささか短絡的な発想ではある。時間旅行を実現するためには、少なくとも三次元連続時空が、時間という軸に沿って完全に保存されていることが必要になる。つまり、今この瞬間を含む全ての事象が、どんな時点のものであっても、素粒子の振る舞いのレベルで再生可能でなければならないのである……。

 さすがに、書いていてアホらしくなってきた。時間旅行の障壁は、なかなかに大きいようだ。TPDDが完成し、朝比奈さんが私の前に現れてくれるのは、いつの日なのだろうか。ええ、もちろん「二人とも」なんて贅沢は言いません。ちっちゃい方だけでも……えっ、それは禁則事項ですって?!
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
▼このエントリーにコメントを残す

   

ようこそ

オーナー

TOM-F

Author:TOM-F
 
 ようこそ、Court Cafe へ。

 自作小説をメインに、アニメや旅行記など趣味のお話を綴っています。
 楽しいひとときを、おすごしください。

作品

FEOバナー

花心一会バナー

あの星バナー

妹背の桜バナー

記事

コメント

ブロとも

ブロとも申請

リンク

外部リンク