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聲の形

昨年はアニメーション映画の当たり年だったように思う。
話題をさらったのは、日本映画歴代二位の興行収入を上げた新海誠監督の長編アニメーション『君の名は。』だが、他にも注目すべき作品が多かった。

今回ご紹介する『聲の形』も、そんな一作だ。
大今良時のマンガを、山田尚子の監督、吉田玲子の脚本で映画化した作品で、キャッチコピーは、『君に生きるのを手伝ってほしい』。

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アニメーションは、作画に定評のある京都アニメーションが手掛けた。さすがといえる安定感とクオリティで、全体にハイレベルな仕上がりだ。

ストーリーを一言で紹介すると、生まれつき耳が聞こえない障がいを持つ少女と、小学校で同じクラスになった少年少女たちとの交流を描いた、青春ジュブナイルだ。

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キャラの外観の造形は、美形かつオーソドックスで好感が持てるものになっている。主人公の将也(しょうや)はイマドキな少年だし、ヒロインの硝子(しょうこ)はとても可愛らしい容姿の少女だ。
脇役たちも、少々エキセントリックな外観の少年はいるものの、おおむね整った容姿の人物ばかりだ。

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そして岐阜県大垣市の美しい景観を背景にした、優美な情景描写も見事なものだった。
  
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全体として、爽やかな感動ストーリーを予感させるデザインである。
であるのだが……。

この作品が他作品と一線を画しているのは、描かれていく少年少女たちの交流が、綺麗なものだけではない、というか、むしろ醜いと言っていいものばかりだ、という点にある。

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未見の方のためにネタバレは極力避けるが、全編を通して、将也の身勝手さ、硝子の卑屈さ、そして彼らをとりまく人物たちのエゴイズムが、これでもかとばかりに描き出される。

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目を背けたくなるようなシーンや、錆び付いた刃物で心を抉られるようなシーンの連続で、観ていて気分が悪くなった。なぜお金を払って、時間をかけて、こんな思いをしなければならないのか。
だが、それこそが噓偽りのない「等身大」の人間なのではないかとも思う。わが身を振り返れば、けして彼らを嗤うことも軽蔑することもできない。だからこその不快感なのだろう。

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濃密な物語だが、コミック7巻分の物語を二時間の尺で描くために、いささか詰め込みすぎたきらいがあるように思う。
そのため、物語の核となるはずの将也と硝子がたどる心の軌跡が、他の登場人物たちがまき散らすノイズに埋もれてしまって、じゅうぶんに堪能することができなかった。
感情移入が不足したまま物語が進んでしまい、結果として、大事なシーンで告げられるキャッチコピーへの共感が薄くなってしまったことは残念だった。

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とはいえ、この作品は、第40回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞を始めとして、数多くの賞に輝いた秀作だ。さもありなんと納得のできる映画だし、問題作といっていいインパクトはあったと思う。

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また、ヒロインの声優にキャストされた早見沙織の演技は、特筆されるべきだろう。声によるコミュニケーションができない少女という難しい役だが、唸りにしか聞こえない声や泣き声などだけで演じきって見せたのは見事だ。
とくに、たった一言のとても大切な言葉が、どうしても相手に伝わらないというシーンは、見ていてほんとうに切なくなった。

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内容が内容だけに、誰にでも勧められる作品ではないが、数多くの人に見てもらいたいと思う映画だ。


※予告編PV(約1分)

 

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コメント
1350:こんばんは。 by 山西 サキ on 2017/06/30 at 21:32:10 (コメント編集)

あ、サキもずっと気になっていたんですよね、この作品。
キャラクターデザインは秀逸だと思っていたのですが、TOM-Fさんもそう思われますか。
でもキャラクターの描写については、あ、そんな感じなんですね。これはちょっと意外。
こう来ましたか・・・。辛いなぁ。
TOM-Fさんのコメント、とても参考になりましたが、サキはちゃんと見ることができるかな。キャラの可愛さだけではとても見ていられないような雰囲気。テーマがテーマだけに、そのままを描き出すと重いですね。
誰にでも勧められる作品ではない・・・か、どうしようかな?
TOM-Fさん、レンタルはまだでしたっけ?

1351:>山西サキさん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/07/01 at 15:15:22 (コメント編集)

>山西サキさん

お、やはりサキさんは気になっておられたんですね。なんとなくですが、そうじゃないかなと思っていました。

キャラはみんな美形ぞろいなんですけどねぇ。彼らの内面が・・・。その可愛い顔で、そういうこと言うかなぁって、感じですよ(笑・・・えない)
もっとも、だからこそ、キャラデザインとして成功しているのかもしれません。ま、人は見た目じゃわからないっていうのの、典型ですね。

作品に描かれているディスコミュニケーションが、未成熟であるがゆえの一過性のものであってほしいと思います。もう、刺さりすぎ、抉られすぎです。
とはいえ、まったく救いがないお話というわけではないですし、見ごたえのある、記憶に残る作品だと思うので、気合を入れてご覧になってみてはいかがでしょうか。
ちなみに、DVDのレンタルはもうはじまっていますよ~。

コメント、ありがとうございました。

1352: by lime on 2017/07/02 at 09:32:05 (コメント編集)

この作品は、予告や、沢山のレビューを見て、気になっていたアニメの一つです。
予告だけで、これは泣かせる秀作なんだろうなあと感じました。(でもそこで満足してしまって、観るまでに至らないのが私のダメなところなんですが^^;)
どの感想を見ても感動、感涙のコメントしかなかったんですが、さすがTOM-Fさん、ちゃんと俯瞰で捉えた感想で、なるほど、と思いました。

不完全な部分も考慮しての感想って、なかなか聞けないので貴重です。
いつか機会があったら見てみたいなと、改めて思いました^^

1353:最近 by 大海彩洋 on 2017/07/02 at 11:15:39 (コメント編集)

アニメの良作が多いですね。といっても、私はひとつも見ないままなのですが(TVにやってくるのを待っている姑息な奴。しかもチェックが行き届かず、結局見ないままの事も多い)、宣伝もかなり効果的にされるようになってきて、あぁ、見たいかも~と思えるものがあります。
こちらも予告を見たときに、あ、なんか『愛してると言ってくれ』みたいだ、って思って、気になっていました。あれ? 古い? ドリカムがずっと歌ってるから最近な気がしてたけど、22年も前だって!
あれは大人の話だから、言いたいことも言えない系の部分がより強かったけれど、若い世代になると、本当に言いたいことは言えないけれど余計な事は言っちゃう、ってのでよりややこしくなるってパターンなのかなぁ。この「余計な事」の部分がより切ないですよね。それが取り戻せない種類のものであったり。

いつも思うけれど、TOM-Fさんの解説には作品への愛が溢れていますね(^^)
ただ褒めそやすのではなくて、冷静に見てくれる、うん、limeさんのおっしゃるとおりです。

1354:>limeさん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/07/04 at 19:43:47 (コメント編集)

>limeさん

はい、この作品、評判はよかったですよね。
同時期に『君の名は。』が公開されてたので、そこまで話題にはなりませんでしたけど、専門家(?)の間ではこちらのほうが評価が高かったようですし。
でも、そういう作品って、実際に見てみたら期待外れだったってのが怖くて、逆になかなか手が出せないんですよね。
この作品は、実際に見てみると、高評価もなるほどなぁと納得でした。テーマは重苦しいですけど、わかりやすい内容でしたし。

なんかエラそうにいろいろ書いていますけど、批評ができるほど映画に詳しいわけではないので、いち視聴者のたわごと程度かと。

お時間があるようでしたら、ぜひご覧になってみてください。たぶん、感動したとか泣いたでは片付けられないものが、心に残るんじゃないかなと思います。

コメント、ありがとうございました。

1355:>大海彩洋さん ありがとうございました by TOM-F@管理人 on 2017/07/04 at 19:44:33 (コメント編集)

>大海彩洋さん

2016年は、アニメの当たり年でしたね。
私はアニメ大好き人間ですが、そのひいき目を差し引いでも、良作が多かったと思います。
でも、映画を観るとなると、まとまった時間も必要だし、なにより時間を合わせて劇場に行くというのが、なかなかね。
そのうちTVで放映されるでしょうから、それを待つというのはある意味で得策かも。もっとも、この作品は、最近の映画には珍しく二時間ちょっとの尺があります。ノーカットで放映されればいいのですが……。

『愛してると言ってくれ』ですか。うわ、不覚! 観てない(つか、TVドラマとかほぼ見ない人なのでw)
ググってみましたが、なるほど、聴覚障碍者という部分が重なりますね。
こちらの作品は、「言いたいことが言えない」ではなくて、どちらかというと相手の気持ちなどガン無視で「言いたいことを言いまくり」で、お互いに心をザクザクと……。で、耳が聞こえないヒロインへも、思いやりとか皆無。むしろ……。という内容です(笑…えないっつうの!)
まあ、ほんとにお見事でしたよ。私にはあんなの絶対に書けない、と思いました。

作品への愛か、そうですね。たしかにそういうものがないと、あのくらいの記事でもなかなか書けませんからね。
まあ、批評などどいう大それたものは書けませんので、好き嫌いレベルの戯言ということで(笑)

コメント、ありがとうございました。

1356:こんにちは~(^0^*)ノ by かじぺた on 2017/07/26 at 14:14:32

わあ!記事発表からもうちょっとで1ヶ月だった!!
すみません、この1ヶ月ばかり
どうもブログに関して捗りませんで
っていうかブログ画面見るのも億劫だったんですけど
、なんとか昨日辺りから立ち直れました\(^0^*)/キャッホーイ!!

そうなんですよね~~~『聲の形』も『この世界の片隅に』も
観に行きたかったんですけど
実際には『君の名は。』を、どうにかこうにか観に行けた!
(観に行ったのは11月の終わりでした(爆))
って感じで見逃しちゃったんですよね・・・
そっかあ~~・・・そういう感じのお話なんですね・・・
私、へたれだから観るの結構辛いかも・・・
とりあえず息子に借りてきてもらおうかなあ
(ゲーム&レンタルビデオ屋でバイトしてます(笑))

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