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シン・ゴジラ ―フクシマと東日本震災と―

映画「シン・ゴジラ」を観た。

この記事は、ネタバレを大量に含んでいるので、未見の方は閲覧にご注意ください。

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日本アカデミー賞を総なめにした本作は、過去のゴジラ作品とは一線を画する作品だった。

特筆すべきは、ゴジラを「破壊者」ではなく「自然災害」として描いている点だろう。
その「対策」も、特殊な武器で打倒したり追い返したりするのではなく、日本の科学技術とそれを運用する能力によって被害の再発と拡大を抑え込み、最後は共存するしかないという結論に至っているシナリオの秀逸さだ。

いささか「ご都合主義」だと思わせられる展開ではあったが、ハリウッド映画のように主人公の個人の力で解決するのではなく、主要な人物たちや官民を総動員した「オール日本」とも言うべき集団の力によってゴジラに立ち向かっていくやり方は、いかにも日本らしいと納得もさせられた。

子ども向けの怪獣映画をここまで見事な大人向けの作品に仕立て上げた、庵野秀明監督をはじめとしたスタッフには拍手を送りたい。

余談になるが、外敵に対しては最も有効なはずの自衛隊や米軍が、ほとんど役に立たないように描かれているのが象徴的だった。
また、「現場」の必死の努力を陰で支える、意外にも巧みな外交戦術が描かれている点にも、実態はどうかはさておき、一定のリアリティが感じられた。


ところで、今日は3.11。言うまでもなく、東日本大震災の日だ。
テレビも朝から関連する番組が多い。

復興が進む被災地の姿が映し出されている中で、報道関係者がある被災地の首長さんに「なにかできることはないか」と言ったところ、「風化させないようにしてほしい」と答えていた姿が印象的だった。

たしかに、災害と背中合わせで生活している日本の住民としては、忘れてはいけない出来事だろう。


ここで、話は「シン・ゴジラ」に戻る。
映画の前半でゴジラが上陸するシーンは、まさに地震による津波被害を彷彿とさせる描写になっていた。
そしていったん海に姿を隠したゴジラが再上陸したときには、放射能をまき散らし住民の生活を破壊する存在、つまり福島原発事故の象徴として描かれていた。
そして再び暴れ出そうとするゴジラを封じ込める作戦は、暴走した原子炉を必死で止めようとした作業を思いおこさせるものだった。
多くの観客は、これを東日本大震災から福島原発事故への流れと同じだと受け取ったのではないだろうか。

いささか気になるのは、主人公級の登場人物が、前半の災害に対しては、被災地の惨状を目にしながら手を合わせるだけだったのに比べて、後半の事態に対しては、前述のとおり権限の壁を乗り越えて挑んでいくという筋書きだ。その姿は、そのまま東日本大震災と福島原発事故への対応を暗示していると思えなくもない。さすがにそれは、うがった見方かもしれないが。


いずれにせよ、映画のラストで、動きを封じられたゴジラが東京のど真ん中に佇立しているビジュアルは、とんでもなく黙示的だ。
いつ動き出すかもしれない時限爆弾と共存していくしかない。そして、そのことを絶対に忘れさせないかのように、目前にあり続けるその存在。

復興事業などで覆い隠すことなく、風化させてはいけない記憶の象徴として、永久に残しておくべきモニュメント。
そういったものも、間違いなくあるのではないかと、あらためて思った。
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コメント
1296: by 八少女 夕 on 2017/03/12 at 05:28:28 (コメント編集)

こんばんは。

TOM-Fさんもご覧になったのですね。
あの解決策のシーンで「あれ使えたらいいのに。フクシマは動かないし光線も出さないんだから、注入しやすいだろうに」と、思いながら観ていました。

官僚も政治家も東映自衛隊も思惑はあっても最終的にみんないい人たちばかりで、あれならいろいろと解決することも多いだろうに……なんて思いながら。

あ、あと、この文脈とは関係ないですが、我々関東の人間は、別の意味でも盛り上がっていました。大抵の友達は「うちは蒲田くんにやられた」「うちは品川くんに潰された」と。もちろん私の実家のあたりも壊滅していました。

1298:>八少女夕さん、ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/03/13 at 21:30:27 (コメント編集)

>八少女夕さん

日本アカデミー賞を総なめでしたからねぇ、さすがに見てみようかと思いまして。
まあ、庵野秀明はエヴァンゲリヲンの監督でもあるので、正直ちょっと気になっていたのもありまして。
そうそう、あれね。フクシマもさっさと海水注入していれば……と言っても、詮無いことですが。
当時を思い返すと、あそこでなにが起きているのか分かっている人は少なかったんじゃないかと思います。かくいう私もそうでした。
映画みたいに、対策本部が出来てちゃんと機能していればと思いますが、それも言ってもしかたのないことですね。

閑話休題。
東京はよく破壊されますからね。そういうのに縁がない地域の住民としては、ちょっと羨ましいです。
しかも今回のシン・ゴジラでは、「蒲田のアイツ」が妙に人気があるみたいで。
で、八少女夕さんのご実家も、潰されたんですね。ご愁傷さまです。
とはいえ、ゴジラに潰された建物は、その後、業績が上がるとか、何らかのいいことがあるというジンクスがあるらしいですよ。良かったですね(なんか微妙)

コメント、ありがとうございました。

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