RSS

秘境と秘湯と

徳島県の西部、険しい山懐に抱かれた秘境祖谷を、のんびりと一泊二日でドライブしてきた。

明石海峡大橋と大鳴門橋を渡り、神戸淡路鳴門自動車道から徳島道に乗り入れ、阿波池田インターチェンジから国道32号線を辿る。
車窓の山が深くなり、吉野川の景勝地である大歩危と小歩危をすぎたところで、県道45号線に入って九十九折れの山道とトンネルで山塊を超えると、ようやく祖谷に着く。

途中、休憩と昼食を含めて約4時間。徳島道の大半が対面通行であり、国道32号線も県道45号線もカーブやアップダウンが多いため、走行距離のわりにはくたびれるドライブだった。

祖谷は、深く抉られた祖谷渓と、標高千メートルの峠を越える山道を辿らないと行くことができない。

  170114-01.jpg

現在は道路が開通して往来も多く、観光名所にもなっているが、かつては陸の孤島であり、独自の生活習慣や風俗などが残る場所だった。
そういう土地柄から、屋島の戦いに敗れた「平家の落人」が住んでいるという伝説も残っている。

「祖谷のかずら橋」も、そんな伝説に彩られた観光名所だ。
しかし、「観光センター」の広大な駐車場には、大型観光バスで大勢の観光客が押し寄せ、それを目当てに川魚の塩焼きを商う土産物屋が軒を連ねている。軽装の老若男女が、店先で串に刺さった焼き魚をほおばる光景は、秘境のイメージからずいぶんかけ離れている。

そんな観光地然とした雰囲気のなかに、まるでとってつけたように「かずら橋」は架かっている。

  170114-02.jpg

一人500円という安くはない料金を払って、橋を渡る。

追っ手がかかったときに簡単に切って落とせるようにと、わざと脆弱な蔦で作られた橋も、今は観光用にワイヤーを仕込んだ立派なアトラクションになっている。

それでも、渡るとゆらゆら揺れるし、足元はすかすかで数メートル下の川が透けて見えるので、スリリングな体験はできる。

  170114-03.jpg

そこそこ時間がかかったので、短い冬の日が傾いてきた。
観光は切り上げて、宿に向かうことにする。

今日の宿は、山懐にある秘湯祖谷温泉に建つ一軒宿「和のホテル祖谷温泉」だ。
専用のケーブルカーでないとたどり着けない谷底の露天風呂は、四国唯一の源泉かけ流しで、極上の湯浴みが楽しめる宿として有名だ。
ずっと泊まる機会を狙っていたが、今回、運よく週末の予約がとれた。この宿に泊まるというのが、この旅行の主な目的でもある。

車一台がすれ違えるかどうかという旧道を走ると、お目当ての宿が見えてきた。
車窓に見える宿の全景は、聞きしに勝る秘境っぷりだ。

  170114-04.jpg
  (ネットで拾った写真です)

通された部屋の窓からは、祖谷渓の絶景が見晴らせた。
あいにくの雨模様だが、目もくらむような風景に圧倒される。

  170114-05.jpg


浴衣に袖を通して、早速、湯浴みに出かける。
専用のケーブルカーから谷底にある露天風呂を見下ろすと、想像以上の急勾配に足が竦んだ。

  170114-06.jpg
  (ネットで拾った写真です)

たどり着いた風呂は、谷川の音を間近に聞く野趣あふれる半露店風呂だった。
ぬるめの湯に入ると、まるでシャンパンに浸かったように、細かな気泡が身体に纏わり付く。いままで多くの温泉に浸かってきたが、こんな湯は初めてだ。

  170114-07.jpg
  (ネットで拾った写真です)   

ゆったりとした湯浴みのあとは、楽しみの夕食だ。
レストランでいただく夕食は、出来立ての料理が一品ずつ運ばれてくる和食のコースだった。

  170114-08.jpg

  170114-09.jpg

  170114-10.jpg

食後にも温泉を堪能し、普段からは想像もできないほど早い時刻に就寝。

朝食は和食のセミバイキングだった。

  170114-11.jpg

籠には彩豊かな料理が並び、汲み上げ豆腐が付いていた。
バイキングメニューは、ご飯、味噌汁、そばの実が入ったけんちん汁の他に、パン、フルーツ、ヨーグルト、フレッシュジュース、牛乳、コーヒーや紅茶など。
贅沢な朝食のあと、もう一度温泉に浸かってから、宿を出た。


崖に張り付くような狭い旧道をすこし走ると、祖谷渓名物の「小便小僧」がある。
小さな駐車場のすぐ脇に、像は立っている。
眼下は目もくらむような断崖絶壁だ。
像の彼方には、雨に煙る祖谷渓が深く遠くどこまでも広がっている。

  170114-12.jpg

雨音の他には、物音ひとつしない。
ああ秘境に来たんだなと、ようやく実感した。
 
トラックバック
トラックバック送信先 :
コメント
1266:おはようございます(^^) by 大海彩洋 on 2017/01/15 at 07:53:32 (コメント編集)

祖谷のかずら橋! わたしが高所恐怖症だというのを決定づけてくれた橋です! しかもこのケーブルで降りていく温泉、まさに同じところに泊まったことがあります(^^) おぉ、懐かしい~しかもほとんど何も変わっていない感じが素敵。
実は龍馬研究会の幽霊部員のわたし、当時、あらゆるルートを駆使して高知に向かったものですが、祖谷渓谷もそのうちの一つでした。
当時は運転もあまり自信がなくて、あのすごい崖っぽい道のあちこちで片道通行とかあってちょっと涙目でした。でも究極はそう、この橋ですよね! わたし、真ん中辺りまで行ってしまって、もう後は行ききるか、引き返すか、あ、行ききるしかないのかと真ん中で泣いておりました。以後は高いところ、怖くていけなくなりました。
あれこれ思い出して楽しませていただきました。ありがとうございました。

そう言えば、TOM-Fさんに新年のご挨拶がまだだったような。昨年は素敵なオフ会の設定をありがとうございました。皆さんが近くに感じられて、楽しい時間となりました。そして今年もまた、よろしくおつきあいくださいませ。
雪で帰れるか心配な、出張先の三重からご挨拶でした(^^)

1267:こんばんは~。 by 山西 サキ on 2017/01/15 at 19:50:16 (コメント編集)

これは美しい穿入蛇行だなぁ。凄いところですね。
あ、かずら橋も面白そうです。
サキは実は高所恐怖症だということが判明したんです。
バルセロナのサグラダファミリアで塔の上に登ったのは良かったのですが、下りのらせん階段(手摺りが無い)がメッチャ恐かったのです。壁にペッタリと張り付いてビビりながら下りました。
サキはこれまで吊り橋やタワーの展望台でも大丈夫だったので、恐怖症じゃ無いと思っていました。
どういうことかと考えたんですが、要するに手摺りが有るか無いかみたいです。客観的に落ちる要素が無い、と判断できれば大丈夫みたいなんですね。変な恐怖症ですね。
ですからこの橋は楽しく渡れると判断します。ね、この隙間からは下に落ちませんよ。手摺りもあるみたいだし。
露天風呂へのケーブルカーにも興味津々です。
素晴らしい風景に癒やされ、珍しい物を体験され、美味しいものを食べ、温泉を楽しまれ・・・TOM-Fさん、今年も創作活動頑張ってくださいね。
この小便小僧は駄目です!だって手摺りが無いもの・・・。

1268:おお〜 by 八少女 夕 on 2017/01/16 at 05:31:59 (コメント編集)

こんばんは。

あはははは。上に2つ、高所恐怖症のコメントが(笑)
オフ会でも、その話題で盛り上がりましたっけ。

私は高所も吊り橋もたいてい大丈夫なんですが、この橋は心理的にちょっとこわいかなあ。あ、ちゃんとワイヤーがついているのを確認したら大丈夫かも。

それはともあれ、温泉三昧に美味しいご馳走。そして朝露天かあ。いいなあ、いいなあ。一泊二日でこういうところに行けるのは本当に羨ましいです。

眼福でした! 本当は行きたいけれど。

1269:≫大海彩洋さん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/01/17 at 08:37:03 (コメント編集)

≫大海彩洋さん

かずら橋、あの中途半端な高さが、どうにも厄介ですよね。
私はわりと大丈夫だったんですけど、やはりダメな人はダメみたいで、動けなくなっちゃってた人もいましたよ。
まああの橋はゆらゆら感が半端ないですけど、吊り橋でもがっちりしたものはありますので、またチャレンジなさってください。九州の由布院から阿蘇に抜ける途中にある「九重夢大吊橋」おススメしておきます。あれくらいぶっとんだ高さになると、逆に怖くないですよ……たぶん(笑)

自称「日本秘湯に入る会」会員としては、ホテル祖谷温泉はずっと行ってみたい宿だったんですよ。でもなかなか機会が作れなくて。あそこに行っているところを見ると、大海彩洋さん巨石だけでなくもしや秘湯もお好きなんですか?
仰る通り、旧道の方はかなりヤバイ道ですよね。ウチの自家用車は小さいのでするする行けましたけど、大きなセダンとかだったらすれ違うだけでも難儀しそうです。

こちらこそ、新年のご挨拶が遅れました。
オフ会、楽しかったですよね。またやりましょうね~。
山間部とか積雪がすごいですよね。気を付けてお帰り下さいね。
コメント、ありがとうございました。

1270:≫山西サキさん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/01/17 at 08:38:30 (コメント編集)

≫山西サキさん

この渓谷、実物は見ごたえありましたよ。同じようなものを、和歌山県の北山川で見ましたが、祖谷渓の方が谷が狭くて深くて、迫力がありました。
サグラダファミリアの階段、手すり無しは反則でしょ。私も手すり無しはダメですね。サキさんと同じように、壁を伝うことになりそうです。手すりとか窓ガラスとかフェンスとか、そういうものがあれば全然平気なんですよね。だから飛行機もまったく怖くない。うん、なんか親近感が湧きます。
かずら橋の隙間はですね、たしかに人間は落っこちないんですけど、持ち物を落っことしそうでひやひやしました。

「ホテル祖谷温泉」のケーブルカー、ちょっと変わっていまして、全線が急傾斜の鉄橋になっていました。地面にくっついていないんですよ。だから、空中ケーブルカーみたいで、かなりスリリングでしたよ。温泉もいいし、面白いので、ぜひ一度お出かけください。

小便小僧、私は怖くなかったです。たぶんサキさんも全然怖くないと思いますよ。種明かしは……ぜひ現地で実物をご覧になってみてくださいね。

コメント、ありがとうございました。

1271:≫八少女夕さん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/01/17 at 08:39:33 (コメント編集)

≫八少女夕さん

高所恐怖症、いろいろなパターンがありますよね。
私は中途半端な高さ&手すり系がない、が恐怖のポイントなんですけどね。
かずら橋の怖さは、高さよりも、足元の隙間と中途半端な幅員にあると思いました。「スカスカ感」が半端なく、それが怖さを助長していると思います。
高さや晒され感は、マリエン橋に比べたら、なんでもないんですけどね。

温泉三昧に美食に秘境めぐりしていると、日本に暮らしていてよかったとしみじみ思います。ヨーロッパの美しさとは、また種類が違う美点ですよね。
またご帰国の折には、こういうところにもお出かけくださいね。

コメント、ありがとうございました。

1272: by けい on 2017/01/18 at 20:12:04

おお。秘境とか、秘湯とか、行ってみたいですねえ。
私は台風で四国の旅が流れて果たせず、いつかはと思いを残してきたので興味津々です。

高いところ、全然平気です。揺れもきっと大丈夫。
微妙な隙間感と澄んだ水にそそられるー^^

1273:≫けいさん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/01/19 at 23:57:08 (コメント編集)

≫けいさん

台風は災難でしたね。
また機会があったら、ぜひお出かけください。
祖谷渓は日本的な秘境&秘湯での代表格ですので、楽しんでいただけると思いますよ。
しかも、高いところや隙間だらけで揺れる橋がオッケーなら、ばっちりです。
祖谷渓のあとは、高知に出て皿鉢料理を楽しむも良し、香川に戻ってうどんを堪能するも良し、です。

コメント、ありがとうございました。

1275: by つるけいこ on 2017/01/23 at 02:10:33 (コメント編集)

山深いですね~。四国は全く行ったことがないので、いつか行ってみたいです!
橋、すごいですね!
でも自動で動くものが怖いわたしとしては温泉ケーブルカーのほうが怖いかも!?(笑)
TOM-Fさん自称「日本秘湯に入る会」なんですか。秘湯という秘湯には入ったことないけど、わたしも珍しい温泉にはワクワクします♪

1277:≫つるけいこさん ありがとうございます by TOM-F@管理人 on 2017/01/23 at 18:26:06 (コメント編集)

≫つるけいこさん

祖谷渓は、ホント山の中って感じです。
今でこそ道路が通じてて、クルマで気軽に行けますけど、こんなところによく住む気になれたなぁ、と感心します。だからこそ、平家の落人とかが、逃げ込んだんでしょうね。
四国は地味ですけど、いいところも結構ありますよ。機会があったら、ぜひお出かけください。

私は絶叫系もOKなんですが、あの温泉ケーブルはマジでちょっと怖かったですよ。レールが高架になってて、空中を進む感じなんですよ。しかも急勾配だし。なので明るいと、ちょっとビビります。

「日本秘湯に入る会」は自称ですけどね(笑) じつは「日本秘湯を守る会」という真面目な団体がありまして、そのもじりというわけです。秘湯、いいですよ。日本に生まれてよかったなぁと思います。
おお、珍しい温泉がお好きですか。話が合いそうですね。また秘湯に入ったら、記事にしますので、お楽しみに(書く書く詐欺がここにもw)

コメント、ありがとうございました。

▼このエントリーにコメントを残す

   

ようこそ

オーナー

TOM-F

Author:TOM-F
 
 ようこそ、Court Cafe へ。

 自作小説をメインに、アニメや旅行記など趣味のお話を綴っています。
 楽しいひとときを、おすごしください。

作品

FEOバナー

花心一会バナー

あの星バナー

妹背の桜バナー

記事

コメント

ブロとも

ブロとも申請

リンク

外部リンク