秘境と秘湯と
旅行のお話 - 2017年01月14日 (土)
徳島県の西部、険しい山懐に抱かれた秘境祖谷を、のんびりと一泊二日でドライブしてきた。
明石海峡大橋と大鳴門橋を渡り、神戸淡路鳴門自動車道から徳島道に乗り入れ、阿波池田インターチェンジから国道32号線を辿る。
車窓の山が深くなり、吉野川の景勝地である大歩危と小歩危をすぎたところで、県道45号線に入って九十九折れの山道とトンネルで山塊を超えると、ようやく祖谷に着く。
途中、休憩と昼食を含めて約4時間。徳島道の大半が対面通行であり、国道32号線も県道45号線もカーブやアップダウンが多いため、走行距離のわりにはくたびれるドライブだった。
祖谷は、深く抉られた祖谷渓と、標高千メートルの峠を越える山道を辿らないと行くことができない。

現在は道路が開通して往来も多く、観光名所にもなっているが、かつては陸の孤島であり、独自の生活習慣や風俗などが残る場所だった。
そういう土地柄から、屋島の戦いに敗れた「平家の落人」が住んでいるという伝説も残っている。
「祖谷のかずら橋」も、そんな伝説に彩られた観光名所だ。
しかし、「観光センター」の広大な駐車場には、大型観光バスで大勢の観光客が押し寄せ、それを目当てに川魚の塩焼きを商う土産物屋が軒を連ねている。軽装の老若男女が、店先で串に刺さった焼き魚をほおばる光景は、秘境のイメージからずいぶんかけ離れている。
そんな観光地然とした雰囲気のなかに、まるでとってつけたように「かずら橋」は架かっている。

一人500円という安くはない料金を払って、橋を渡る。
追っ手がかかったときに簡単に切って落とせるようにと、わざと脆弱な蔦で作られた橋も、今は観光用にワイヤーを仕込んだ立派なアトラクションになっている。
それでも、渡るとゆらゆら揺れるし、足元はすかすかで数メートル下の川が透けて見えるので、スリリングな体験はできる。

そこそこ時間がかかったので、短い冬の日が傾いてきた。
観光は切り上げて、宿に向かうことにする。
今日の宿は、山懐にある秘湯祖谷温泉に建つ一軒宿「和のホテル祖谷温泉」だ。
専用のケーブルカーでないとたどり着けない谷底の露天風呂は、四国唯一の源泉かけ流しで、極上の湯浴みが楽しめる宿として有名だ。
ずっと泊まる機会を狙っていたが、今回、運よく週末の予約がとれた。この宿に泊まるというのが、この旅行の主な目的でもある。
車一台がすれ違えるかどうかという旧道を走ると、お目当ての宿が見えてきた。
車窓に見える宿の全景は、聞きしに勝る秘境っぷりだ。

(ネットで拾った写真です)
通された部屋の窓からは、祖谷渓の絶景が見晴らせた。
あいにくの雨模様だが、目もくらむような風景に圧倒される。

浴衣に袖を通して、早速、湯浴みに出かける。
専用のケーブルカーから谷底にある露天風呂を見下ろすと、想像以上の急勾配に足が竦んだ。

(ネットで拾った写真です)
たどり着いた風呂は、谷川の音を間近に聞く野趣あふれる半露店風呂だった。
ぬるめの湯に入ると、まるでシャンパンに浸かったように、細かな気泡が身体に纏わり付く。いままで多くの温泉に浸かってきたが、こんな湯は初めてだ。

(ネットで拾った写真です)
ゆったりとした湯浴みのあとは、楽しみの夕食だ。
レストランでいただく夕食は、出来立ての料理が一品ずつ運ばれてくる和食のコースだった。



食後にも温泉を堪能し、普段からは想像もできないほど早い時刻に就寝。
朝食は和食のセミバイキングだった。

籠には彩豊かな料理が並び、汲み上げ豆腐が付いていた。
バイキングメニューは、ご飯、味噌汁、そばの実が入ったけんちん汁の他に、パン、フルーツ、ヨーグルト、フレッシュジュース、牛乳、コーヒーや紅茶など。
贅沢な朝食のあと、もう一度温泉に浸かってから、宿を出た。
崖に張り付くような狭い旧道をすこし走ると、祖谷渓名物の「小便小僧」がある。
小さな駐車場のすぐ脇に、像は立っている。
眼下は目もくらむような断崖絶壁だ。
像の彼方には、雨に煙る祖谷渓が深く遠くどこまでも広がっている。

雨音の他には、物音ひとつしない。
ああ秘境に来たんだなと、ようやく実感した。
明石海峡大橋と大鳴門橋を渡り、神戸淡路鳴門自動車道から徳島道に乗り入れ、阿波池田インターチェンジから国道32号線を辿る。
車窓の山が深くなり、吉野川の景勝地である大歩危と小歩危をすぎたところで、県道45号線に入って九十九折れの山道とトンネルで山塊を超えると、ようやく祖谷に着く。
途中、休憩と昼食を含めて約4時間。徳島道の大半が対面通行であり、国道32号線も県道45号線もカーブやアップダウンが多いため、走行距離のわりにはくたびれるドライブだった。
祖谷は、深く抉られた祖谷渓と、標高千メートルの峠を越える山道を辿らないと行くことができない。

現在は道路が開通して往来も多く、観光名所にもなっているが、かつては陸の孤島であり、独自の生活習慣や風俗などが残る場所だった。
そういう土地柄から、屋島の戦いに敗れた「平家の落人」が住んでいるという伝説も残っている。
「祖谷のかずら橋」も、そんな伝説に彩られた観光名所だ。
しかし、「観光センター」の広大な駐車場には、大型観光バスで大勢の観光客が押し寄せ、それを目当てに川魚の塩焼きを商う土産物屋が軒を連ねている。軽装の老若男女が、店先で串に刺さった焼き魚をほおばる光景は、秘境のイメージからずいぶんかけ離れている。
そんな観光地然とした雰囲気のなかに、まるでとってつけたように「かずら橋」は架かっている。

一人500円という安くはない料金を払って、橋を渡る。
追っ手がかかったときに簡単に切って落とせるようにと、わざと脆弱な蔦で作られた橋も、今は観光用にワイヤーを仕込んだ立派なアトラクションになっている。
それでも、渡るとゆらゆら揺れるし、足元はすかすかで数メートル下の川が透けて見えるので、スリリングな体験はできる。

そこそこ時間がかかったので、短い冬の日が傾いてきた。
観光は切り上げて、宿に向かうことにする。
今日の宿は、山懐にある秘湯祖谷温泉に建つ一軒宿「和のホテル祖谷温泉」だ。
専用のケーブルカーでないとたどり着けない谷底の露天風呂は、四国唯一の源泉かけ流しで、極上の湯浴みが楽しめる宿として有名だ。
ずっと泊まる機会を狙っていたが、今回、運よく週末の予約がとれた。この宿に泊まるというのが、この旅行の主な目的でもある。
車一台がすれ違えるかどうかという旧道を走ると、お目当ての宿が見えてきた。
車窓に見える宿の全景は、聞きしに勝る秘境っぷりだ。

(ネットで拾った写真です)
通された部屋の窓からは、祖谷渓の絶景が見晴らせた。
あいにくの雨模様だが、目もくらむような風景に圧倒される。

浴衣に袖を通して、早速、湯浴みに出かける。
専用のケーブルカーから谷底にある露天風呂を見下ろすと、想像以上の急勾配に足が竦んだ。

(ネットで拾った写真です)
たどり着いた風呂は、谷川の音を間近に聞く野趣あふれる半露店風呂だった。
ぬるめの湯に入ると、まるでシャンパンに浸かったように、細かな気泡が身体に纏わり付く。いままで多くの温泉に浸かってきたが、こんな湯は初めてだ。

(ネットで拾った写真です)
ゆったりとした湯浴みのあとは、楽しみの夕食だ。
レストランでいただく夕食は、出来立ての料理が一品ずつ運ばれてくる和食のコースだった。



食後にも温泉を堪能し、普段からは想像もできないほど早い時刻に就寝。
朝食は和食のセミバイキングだった。

籠には彩豊かな料理が並び、汲み上げ豆腐が付いていた。
バイキングメニューは、ご飯、味噌汁、そばの実が入ったけんちん汁の他に、パン、フルーツ、ヨーグルト、フレッシュジュース、牛乳、コーヒーや紅茶など。
贅沢な朝食のあと、もう一度温泉に浸かってから、宿を出た。
崖に張り付くような狭い旧道をすこし走ると、祖谷渓名物の「小便小僧」がある。
小さな駐車場のすぐ脇に、像は立っている。
眼下は目もくらむような断崖絶壁だ。
像の彼方には、雨に煙る祖谷渓が深く遠くどこまでも広がっている。

雨音の他には、物音ひとつしない。
ああ秘境に来たんだなと、ようやく実感した。