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思い出のマーニー

「思い出のマーニー」は、スタジオジブリが2014年に制作した、劇場用長編アニメだ。
 監督は、以前にジブリで「借りぐらしのアリエッティ」を作った、米林宏昌が務めた。
 この作品は、宮崎駿や高畑勲が関与しないで作られた、ジブリとしては異色の作品だ。

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 アニメーションはオーソドックスなものだが、スタジオジブリらしい丁寧な仕事ぶりだ。
 とくに背景のレベルの高さは、目を見張るものがある。担当したのは「借りぐらしのアリエッティ」と同じ種田陽平だが、今回もまた美術の域に達する仕事をしている。彼の描いた背景画を集めた展覧会が開かれているが、さもありなんというものだ。

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 音楽は、各シーンに合った美しいものが入れられているが、雰囲気を盛り上げる程度のもので、特筆できることはない。

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 ストーリーは、自身の境遇のために心を閉ざした少女アンナが、喘息の療養のために訪れた田舎町で、謎めいた少女マーニーと出会い、心を通わせていくなかで、自身の境遇を受け入れていくという、じつに美しい物語だ。

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 しかし、そのシナリオと演出は、残念ながら今一歩というところだった。
 未見の方のためにネタばらしは控えるが、この物語のテーマはおそらく「和解」と「受容」だろう。
 シナリオは一本道でわかりやすいし、演出も奇をてらわない素直なものだから、その意味では良心的な作りだと思う。
 だが、上映時間が短かいのに、シナリオのボリュームの配分が良くないことと、中途半端な欲を出したために、すべてが消化不良になってしまったような気がする。
 アンナの現状の説明や、マーニーとの関係の謎解きなどはさっくりやってしまって、アンナとマーニーの交流や、アンナが自身の境遇を受容し和解していく部分に、ボリュームを使って欲しかったと思うのだ。肝心な部分が唐突な展開だったり、とってつけたような後日談風になっていたので、感動する前に醒めたり疑問を感じたりしてしまった。
 ただの観客である私が「たられば」を言ってもしかたないが、もしあと三十分なり四十分なりの長さがあれば、もっといいシナリオが作れたのではないかとも思う。どうもこのあたり、テレビ放映ありきの九十分の呪縛が、映画そのものをだめにしているような気がしてならない。

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 そして、今回もまたキャラボイスに、プロの声優はなく俳優がキャストされた。他の作品ほど酷くはなかったが、やはり声の演技力は一歩劣る。そろそろ誰か、この悪しき流れを断ち切ってほしいものだ。

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 巷では、この作品のことを「百合」だとかなんとか言っているようだが、けしてそんな色物ではなく、叙情的なストーリーを美しいアニメーションで見せてくれる良作であると思う。
 アンナと同年代の中高生くらいの少女や、若い女性におすすめできる作品だと感じた。
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コメント
896:こんばんは by 八少女 夕 on 2015/05/31 at 23:40:55 (コメント編集)

亀コメントですみません!

なるほど。劇場用アニメだから好きなように作っていいというわけではなくて、はじめから「これはテレビで放映されるときのために90分以内にしておかなきゃ」という縛りみたいなものがあるのですね。

商業作品だから、どうやってコストを回収すべきかを考えなくてはいけないのは当然なんでしょうが、そのために本来の「テレビ番組にないものを映画として作る」というある種の自由さが犠牲になってしまうわけなんですね。

この作品の背景の美しさは、ここにあるプリントスクリーンだけでもわかるように、本当にジブリらしい丁寧な仕事ですよね。ヨーロッパではジャパン・アニメではない世界中のアニメを見る機会があるのですが、この仕事っぷりに敵う描き込みは見たことがありません。CGではなくて、人の手でここまでの仕事をするのはやはりジブリならではだと思います。

でも、それよりもきっとストーリーの自然さや、誰が声をあてているのかの方が、観る方の印象を左右するものなのでしょうね。

そういう意味では、誰がなんといおうと完璧主義の自分を通すタイプの強烈なトップが必要な分野なのかもしれないと思いました。

ちなみにこの作品はまだ見た事がないのですが「アリエッティ」は観たんですよ。ドイツ語吹き替えで(笑)「ああ、もし声優だったらな〜」というジブリを観る度に思う感覚をなくすには、別言語で観るのが一番かもしれません。

898:Re: こんばんは by TOM-F@管理人 on 2015/06/01 at 20:23:05 (コメント編集)

≫八少女夕さん

映画の長さって、観客が集中できる時間が、とか言われていますけど、それにしてはほぼ90分前後の作品が多すぎます。CMやらなんやら入れて、ノーカットで放映すると、ちょうど2時間くらいになるんですよね。しかも、スポンサー(?)にTV局の名前が堂々とクレジットされてるし。
それでも、そこに合うシナリオをはめ込んでくれればいいんですけど、原作があるとどこかが犠牲になったりして、なんだかなぁと思ってしまいます。

この映画では、背景美術はほんとうに美しかったです。背景画なんて、適当に作ってても作品としては成立してしまうんですけど、なんか作り手の情念みたいなものが感じられて、いいなぁと思います。
そんな背景美術だからこそ、肝心のストーリーや、アニメの良しあしの大きなポイントである声優の存在は、おざなりにできないですよね。

お、アリエッティをご覧になったんですね。しかもドイツ語吹き替え版ですか。いや海外で上映するなら、今時はあたりまえですけど、そういうバージョンがあるんですね。字幕スーパーが入ったドイツ語版とか、観たら面白いかもしれませんね。俳優の顔がちらつかなくてよさそうだし(笑)

コメント、ありがとうございました。

899:こんばんは。 by 山西 サキ on 2015/06/05 at 20:13:18 (コメント編集)

ウウ~ン、TOM-Fさんにそう言われると見てみようかなぁ。と思いますね。
サキはこの作品をまだ見てないんですよ。
宮崎さんと高畑さんが関与していない、と言うところで二の足を踏んでいたんですが、レンタルできそうですしね。
種田陽平さんの絵と、丁寧な仕事については全く問題ないでしょうから、後はどういう印象を受けるか、いかに物語の中に入り込めるか、でしょうね。
いくらかでも次世代のジブリを感じることが出来れば良いのですが・・・。

900:Re: こんばんは。 by TOM-F@管理人 on 2015/06/06 at 11:50:46 (コメント編集)

≫山西サキさん

あ、まだご覧になってなかったんですね。
下手なあらすじとか解説を書きまくらなくて、よかった~。
宮崎駿と高畑勲はタッチしてませんが、監督は「借りぐらしのアリエッティ」を作った人と同じですから、随所にジブリらしさは感じられますよ。そういう意味では、次世代という感じはしませんでしたが……。
シナリオとしてはちょっと物足りませんでしたが、サキさんのおっしゃる通り、序盤で物語に入り込めれば、そのまま最後までいけると思います。DVDのレンタルが始まってますので、気軽に観られますしね。
記事では触れていませんが、エンディングの歌は、すごく良かったですよ~。

コメント、ありがとうございました。

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