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桜花抄-秒速5センチメートル-

 朝、駅の改札を抜けると、桜の花が咲いていた。青空を背景にして、ピンクの花を開き、そして散っていく、桜。この時期になると、日本人に生まれて良かったと思う。
 桜、といえば、思い出す映画がある。
「秒速5センチメートル」
 アニメ映画で、監督は新海誠。30分弱の小編三話で構成された、珠玉の映画である。キャッチフレーズは「どれほどの速さで生きれば、また君に会えるのか」。凝縮されたストーリーと、圧倒的な映像美が素晴らしく、大好きな映画のひとつである。
 その映画のなかでも、屈指のパートがある。第一話「桜花抄」の冒頭だ。
 主人公である二人は、同じ小学校に通う仲の良い少年と少女だ。
 満開の桜に彩られた通学路で、少女は舞い散る桜の花びらに手を差し伸べながら、少年にささやく。
「桜の花が散るスピード。秒速5センチメートル…」
 そして、不意に駆け出した少女を追う少年。通学路という日常を駆け抜けた少女は、少年より一足先に、踏切を渡り終える。一歩遅れてきた少年の目前で、遮断機が降りる。
 踏切の向こう側で、雨上がりの空にピンクの傘を広げ、「来年の桜も、一緒に見られるかな」と笑顔で問いかける少女。少年が答えを返すより早く、少女の姿は通過する電車の向こうに消える。そして、タイトルである「桜花抄」の文字がテロップされる。
 わずか30秒ほどのシーンだが、美しさ、儚さ、そして残酷さが渾然一体となって、見るものの心を揺さぶる。映画を見終わったあと、このシーンを思い出すだけで、目頭が熱くなってしまう。この映画のすべてが、ここにあるといっても過言ではないだろう。
 そして今、そよ風に舞い散る桜花を見ながら、思うのだ。
 たとえ彼が、どんな速さで生きたとしても、常に彼より一歩先を行ってしまう彼女に追いつくことなど、できはしなかったのだ、と。
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