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伊勢、雨もまた奇なり

 伊勢に出かけた日は、あいにくの雨模様だった。
 普段の不信心のせいで、天照大神の御機嫌を損ねたのかもしれない。
 日本神話によると、天照大神が岩戸に隠れたため、世界が暗くなってしまったといわれている。もちろん雨天を指した話ではないだろうが、今回の伊勢の旅は、全国にいくつかある「岩戸隠れ」の舞台のひとつ、二見興玉神社からはじめよう。

 ショッピングモールのようなお土産屋を抜けて、傘を広げて海沿いの小道をたどる。磯の生臭い匂いが、湿度の高い風に乗ってきた。
 最初に見えてきたのは、綿津見大神(龍神)をお祀りする竜宮社だ。御影石の鳥居と、朱色の社殿が鮮やかだ。

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 竜宮社からすこし歩くと、二見浦のシンボルである夫婦岩が見えてくる。

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 日本で最も有名な岩だろうと思うが、小学校の修学旅行で初めて見てから、見に来るたびに小さくなっていくように感じる。波浪や風雨による侵食のせいなのか、私の気のせいなのかは判然としない。

 夫婦岩の先には、二見興玉神社の社殿が建っている。祭神は、猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)、宇迦御魂大神(うがのみたまのおおかみ)、綿津見大神(わたつみのおおかみ)の三柱。綿津見大神はさきほどの竜宮社のご祭神だ。
「天の岩屋」は、その社殿の向かい側にぽっかりと口を開けている。覗き込むと、奥行き2~3メートルほどの薄暗い岩屋だ。ここは、二見興玉神社のご祭神の一柱である宇迦御魂大神をお祭りしていた三宮神社の遺跡であると言われている。宇迦御魂大神は別名を豊受大神ともいい、伊勢神宮外宮の祭神である。
 二見興玉神社の案内には、『古来より、人々は当二見浦に詣で、夫婦岩の間から差し昇る「日の大神」と、夫婦岩の沖合700mの海中に鎮まる猿田彦大神縁りの霊石と伝えられる「興玉神石(おきたましんせき)」を拝してまいりました』とある。
 その案内を読んで、「天の岩屋」の前から二見興玉神社を振り返って見ると、ああなるほどと思った。

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 「天の岩屋」「二見興玉神社」「夫婦岩」は、ちょうど東西に一直線に並んでいるのだ。
 天気の良い日に朝から夕方までここに居れば、夫婦岩の彼方から昇った太陽が、やがて天の岩屋の向こうに沈んでいくのを見ることができるだろう。ここに神社を建てた人物は、そういうロマンチストだったのかもしれない。

 雨の中を伊勢市にとってかえし、伊勢神宮に参拝する。
 簡単に伊勢神宮と書いたが、この神社の正式名称は「神宮」である。地名も祭神の名もつかない。いわゆる、別格扱いなのだ。
 「神宮」には、外宮豊受大神宮と内宮皇大神宮の二社があることは広く知られているが、じつは三重県内の4市2郡にわたって建ち並ぶ125の社宮を合わせて「神宮」なのである。全部にお参りすることはとうてい叶わないが、せめて外宮豊受大神宮に参拝してから内宮皇大神宮に参拝すべきであるとされている。とはいえ、ツアーで訪れる参拝客は、内宮だけの参拝となる場合も多い。今回のツアーもそうだった。

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 五十鈴川を渡ると、鬱蒼たる神宮の森が待ち構えている。木々の緑が雨に濡れて、清浄な気がさらに磨かれたように感じる。

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 神宮に来るのは、小学校の修学旅行に始まってすでに十回ちかくになるが、何度来てもこの雰囲気は変わらない。五十鈴川で手を清めてから、式年遷宮を終えたばかりの拝殿前でお参りを済ませる。

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 参拝の後は、門前の「おかげ横丁」をぶらつくことにした。

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 となると、なにはともあれ、まずは赤福もちを食べないと始まらない。赤福もちは、最近では大阪の駅の売店でも売っているが、やはりこの場所でいただくと一味違う。プラシーボ効果だろうという突っ込みは、ナシで(笑)

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 衝動的に食べてしまったが、実を言うとちょうどお昼どきである。本来なら昼食が先であるはずなのに、完全に目が眩んでいたらしい。
 気を取り直して、お昼ご飯をいただく店を探す。横丁には数多くの飲食店があり、名物も伊勢うどんや手こね寿司など盛りだくさんだ。
 どれにしようか迷っているうちに、「豚捨」のコロッケが美味しいという情報が耳に入った。「豚捨」は有名な牛肉屋であり、牛丼もおいしいと聞いている。さっそく出向いて、ランチは、出来立て熱々のコロッケと牛丼にした。

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 コロッケは、衣はさっくり、中身はほっくりとしていて、たしかに美味しい。牛丼も、柔らかなバラ肉がたっぷりと盛り付けてあって、すき焼き丼みたいな感じだ。さすがに、吉野●や松●のものとは違う。

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 完全にお腹が朽ちたので、「五十鈴川カフェ」に入り、窓際の席でアイス・カフェオレをいただく。

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 カフェの窓から見える五十鈴川に、雨粒が落ちて、波紋が重なり合う。
 雲は低く、お日様は影も形も見えない。片参りがやはりまずかったのか、結局、天照大神は岩戸から出てきてはいただけなかったのだった。

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コメント
656: by ゆさ on 2014/08/13 at 23:30:12

伊勢伊勢!
うおお新しいお社にお参りされたのですね~いいなあ!
20年の建物も味がありましたがぴかぴかのお社も一度でいいから見てみたい。
お天気は残念でしたね。おかげ横丁も心なしか人が少ないような。
赤福、あそこで食べるとおいしいですね。京都の八つ橋も京都で食べるとおいしい、なんででしょうね、土地の力かな…。

五十鈴川カフェは去年、入りたかったのですが混んでて入れませんでした~。
雰囲気すてきで飲み物もおいしそう!また行けたら絶対入ります。

夫婦岩はずいぶん前に見ましたけど今だったらどう見えるのかな…。
毎年同じ場所に旅行、というのもおもしろいですが時間を置いて旅行するのも色々発見がありそうですね。

657:そうか by 大海彩洋 on 2014/08/14 at 00:27:52 (コメント編集)

遷宮後ですものね。さすがTOM-Fさん。押さえるべきところを押さえた旅をされていますね!
そう言えば最近私も旅行中に雨に降られる率が高いかも。北海道出身の某雨男のがうつっちゃったか……
それはさておき、実は神社とかお寺って、雨が似合うんですよね。このお写真の雨の風景は素敵だなと思います。
この橋を渡るときにきりっと身が引き締まる思いがします。結界の中に入るような。

そして、やはり、門前のお土産物やさんや喫茶店などなどにはテンションが上がりますよね。私もお参りはもちろん大事なのですけれど、この周囲のちょっとおのぼりさん的お店を巡るのも大好きなんです。
伊勢……私もまた行ってみようかな。大学生の時に行ったきりだなぁ。伊勢参りの民謡も習っていることだし(^^)

658:あ、お伊勢さんだ by 八少女 夕 on 2014/08/14 at 04:55:57 (コメント編集)

まだ新旧のお宮、並んでいました?
私は生まれてからまだ去年の一年か行ったことがないのですが、また行きたいと思いましたね〜。霊感ゼロの私にもわかる、「ここは外とは違うぞ」の空氣。さすがですよね。

あ、でも、もちろん出雲もまた行きたい。伊勢の方が実家からずっと近いんですけれどね。

二見浦、竜宮社、行っていない所ばかりだわぁ。なぜ日本にいる間に行かなかったのか。

「赤福を食べなくては」はよくわかります。神宮の参道は本当に目移りしますよね。よく計画を立てていかないと地団駄を踏む羽目に。

私は二個入り赤福を買って、帰りの新幹線で食べましたよ〜。

ツアーでいらしたのですね。神戸からだとバスですか? いいなあ。私もあと二週間くらい働いたら休暇だあ。頑張ろうっと。

659:Re: タイトルなし by TOM-F@管理人 on 2014/08/14 at 21:13:32 (コメント編集)

> ゆさ さん

新しいお社、見てきましたよ。雨のせいか、思ったよりピカピカじゃなかったんですけど。
ほんと、雨のせいでしょうね。参拝者も観光客も少なかったです。おかげで、しっとりと落ち着いた雰囲気は味わえましやけど。
赤福もね、同じものだとおもうんですけど、なんかおいしいような気がするんですよ。舌だけで味わってるんじゃないんだなって、思いますよね。
五十鈴川カフェ、かわいらしい小物なんかも置いてあって、いいお店でしたよ。カフェオレも、おいしかったです。
夫婦岩は、なんかほんとにだんだん小さくなっているような気がしました。あれですね、子供のころに大きいと思っていた建物とか広いと思っていた道が、大人になったら小さく狭く見えちゃうってやつかもしれません。

コメント、ありがとうございました。

660:Re: そうか by TOM-F@管理人 on 2014/08/14 at 21:21:26 (コメント編集)

> 大海彩洋さん

ビフォー・アフターじゃないですが、遷宮前と遷宮後に続けて行ってみたかったですね。今から思えば、惜しいことしました。
雨が似合うところと、晴れが似合うところがありますからね。仰る通り、神社もお寺も雨の日が意外といいんですよね。おおむね空いているし、いろんなものとゆっくりと対話ができるような気がします。
そうそう、門前のお土産屋さんとか飲食店は、やはり楽しいです。お参りしたあとは、遊ぶぞって感じ、神仏ともうまく折り合いをつける日本人的発想って、やっぱりいいと思います。
夫婦岩も、巨石紀行の対象になるんでしょうか? あのあたりに、ほかに巨石とかあるのかな。大海彩洋さんの伊勢紀行も読んでみたいです。

コメント、ありがとうございました。

661:Re: あ、お伊勢さんだ by TOM-F@管理人 on 2014/08/14 at 21:33:32 (コメント編集)

> 八少女夕さん

旧い方のお社もあったのかもしれないんですが、私たちが参拝したところからだとわかりませんでした。
私も霊感系はゼロですが、五十鈴川の向こうは人間の世界じゃない、みたいな感じがしますよね。
伊勢に行ったから、今度は出雲に行きたいなぁ。秋にでも、行こうかな。
二見浦の竜宮社では、真っ先に龍王さまを思い出しましたよ。ぜひ、お天気のいいときにお出かけください。夫婦岩の彼方には、富士山も見えるそうです。
甘いものに目がないので、気が付いたら食べちゃってました。食べてから、お昼ご飯どうするんだよ、って自分にツッコミ入れたりして(笑)
へ、二個入りなんてあるんですか? 知らんかったなぁ。赤福、侮れん。
はい、観光バスのツアーです。じつは一泊二日の日程で、前日は鳥羽水族館を見学しました。その二日目なんですよ。
休暇ですか、それは楽しみですね。私は、もう夏休み終わっちゃいました。あとは働くばかりだぁ……orz

コメント、ありがとうございました。

662: by 山西 サキ on 2014/08/18 at 21:59:24 (コメント編集)

伊勢神宮、見たことはないんですけど。
先もなんと修学旅行以来行ってないと言ってます。何十年前?

でも荘厳な雰囲気味わってみたいですね。
早朝が良いって聞いたことがあります。

サキは甘い物も良いですけど、伊勢うどんが食べてみたいです。

663:Re: タイトルなし by TOM-F@管理人 on 2014/08/19 at 18:46:44 (コメント編集)

> 山西サキさん

伊勢神宮は、神社の建築としてみたら、ちょっと拍子抜けすると思います。技術の粋をこらしているのかもしれませんけど、地味~ですよ。
ただ、気配というか雰囲気がね、なにかこう、自然と頭が下がっちゃうんですよ。
早朝、いいと思います。人が少ないと、さらにそういう気配が濃いと思います。

伊勢うどん、じつはあの前日にいただいておりまして。
ふわっとした食感で、讃岐の歯ごたえ系とは一線を画するうどんでした。味は濃かったですけど(笑)

コメント、ありがとうございました。

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