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凪のあすから

 『凪のあすから』は、2013年秋から2014年春まで放映されたアニメーション作品だ。

 ノスタルジックな海辺の町を舞台に、思春期の少年少女の揺れ動く心情を、透明感あふれる描写と演出で描いている。
 月刊誌の漫画を原作に、アニメーション制作はP.A.WORKSが担当した。

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 アニメーションの技法は、最新のデジタルアニメを駆使しながらも、それと感じさせないオーソドックスな作画だ。背景やキャラクターを含めて、作画は全話を通して高いレベルを維持していて、どのシーンを見ても繊細で美麗だ。

 音楽は、シーンに合った無難なものであったが、オープニング曲の「lull〜そして僕らは〜」と「ebb and flow」、エンディング曲の「アクアテラリウム」と「三つ葉の結びめ」の四曲は、そのアニメーションと相まって甘酸っぱい佳作ぞろいだった。とくに、切なさのあふれる歌詞を やなぎなぎ が感動的に歌い上げた「三つ葉の結びめ」は、一度耳にすると忘れられなくなる名曲だ。

 シナリオは、恋愛ものでありながら、2クール25話の長丁場を中だるみさせずにまとめ上げた、無駄のない構成が光る。話の運びの手堅さとシナリオメイクの感触に、かすかなデジャビュを感じるなと思ったら、シリーズ構成を担当しているのは『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』の脚本を書いた岡田麿里だった。

 ストーリーの構造は、人が海中と陸上に分かれて住む世界を舞台にしたファンタジーであり、テーマは少年少女の恋愛を描いたラブストーリーである。
 ネタバレになるが、本作は、前半と後半の間に5年の時が過ぎるというストーリー上の断裂があって、物語の奥行きを深くしている。
 前半は、輝くような夏を舞台に、少年少女たちの恋愛の三角関係を軸に、海中と陸上に暮らす人々の様々な人間模様を浮かび上がらせる物語だ。

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 海中と陸上に暮らす人々には様々な誤解や軋轢があり、海中の住人たちには厳しい掟もあって、陸上の住人たちとは相容れない関係にある。そんな中で出会った海中と陸上の少年少女たちは、様々な事情を抱えた大人たちを巻き込みながら、思春期の淡い感情を交錯させていく。

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 そして、前半のクライマックスで起きる大事件をきっかけに、物語は大きく転換する。

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 後半は、世界が雪に閉ざされた5年後の冬を舞台に、複雑さを増した少年少女たちの多角関係を軸に、物語世界の秘密に迫るという展開だ。

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 5年の間、陸上では普通に時が流れるが、海中の住民たちは「冬眠」をしていて成長も時間も止まっているという設定で、ヒロインも交代する。

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 地上で時を経た人々と海中で時が止まっていた人々との間には、年齢や意識の違いから様々な歪みが生じる。また、雪に閉ざされた世界をどうすれば元に戻せるのかという謎解きの要素も加え、苦悩したり衝突したりしながらも、少しずつ新しい関係を築いていく少年少女の姿と心情を余すところなく描ききっているのは見事だ。
 最終話の落としどころやラストシーンも納得できる出来栄えで、全編を通して見ごたえのある作品だった。

 お気に入りのキャラクターは、比良平ちさき(ひらだいら ちさき)と、潮留美海(しおどめ みうな)。

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 叶わぬ恋や届かない思いを心に秘めて、それでも健気に振舞う二人の少女は、じつに切なくて愛おしい。どうも私は、こういうキャラに目がないようだ。

『凪のあすから』は、アニメーション、音楽、シナリオが高いレベルでバランスしていて、奇を衒った演出も無く、思春期の少年少女たちの物語を真正面から描いた秀作である。アニメーションというジャンルが苦手な人でなければ、安心して視聴をおすすめできる作品だろう。

 【前半(第1クール)PV】
   

 【後半8第2クール)PV】
   
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コメント
608:ほほう。 by 山西 サキ on 2014/06/11 at 19:55:25 (コメント編集)

このお話も面白そうですね。
TOM-Fさんが紹介されている場面だけを見ていると普通のドラマっぽく見えますが、海中に棲む人と地上に棲む人が登場する時点でもう普通じゃ無いですね。
サキは「人魚姫」を連想してしまいました。
この2つの種族の関わり合い方や様々な設定はどうなっているのかな?
それに大事件って何が起こったんでしょう?
前半と後半でヒロインを交代させているようですが、どのように処理されているんでしょう?かなり興味あります。

あ、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』は見ました。
これはレビューを書けないほど切ないお話しで、ショックでした。
ではでは。

609:Re: ほほう。 by TOM-F@管理人 on 2014/06/14 at 14:33:33 (コメント編集)

> 山西サキさん

コメント返信、遅くなってすみません。

はい、面白いアニメでしたよ。
もともと人はみんな海に暮らしていて、そこから陸に上がっていき、今では人口が逆転している、という関係でした。お互いにお互いを見下している、そんな関係として描かれていましたね。
そんななかでも、わかりあおうとする人や、海に憧れる人、陸で生きていきたいと願う人がいて、それぞれが悩んだり喜んだりするというお話です。とても透明感のある作品でしたよ。
ぜひ一度、ご覧下さい。

> それに大事件って何が起こったんでしょう?
> 前半と後半でヒロインを交代させているようですが、どのように処理されているんでしょう?かなり興味あります。

大事件は、海の少年少女たちが、陸の人たちと心を通わせ、一緒になってあるイベントを実行するのですが、そこで大きな災害が起きるというものです。それをきっかけにして、第一部のヒロインは誰も近づけない場所で「冬眠」に入ってしまいます。
そして、地上では五年がすぎ、幼かったひとりの少女が成長してヒロインになるというお話です。

>
> あ、『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』は見ました。
> これはレビューを書けないほど切ないお話しで、ショックでした。

あ、それわかります。
私も、あの記事を書いたのは、見終わってからそこそこ時間がたってからでしたからね。今でも「secret base」を聴くと、じ~んとなりますので。

コメント、ありがとうございました。

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