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猫物語

『猫物語(ネコモノガタリ)』は、西尾維新の小説を原作とした日本のTVアニメーションで、2012年12月と2013年7月に放映された。通称、「物語シリーズ」と呼ばれるアニメ作品群の中の一作だ。
「物語シリーズ」は、現代日本の田舎町を舞台にしたローファンタジー。主人公は、ひょんなことから吸血鬼の能力を持ってしまった、阿良々木暦(あららぎこよみ)という変わった名前の男子高校生。「怪異」と呼ばれる超常現象に関わる、同級生や後輩の少女、ふたりの妹、ヴァンパイアの女性、怪異を狩る者たちが繰り広げる事件を描く。
アニメーションは、新房昭之が総監督を勤め、シャフトが製作した。印象的なカットや止め絵を多用し、文字だけの画像を差し込む独特の手法で、動きの滑らかさや緻密な作画が主流の現代アニメとは一線を画したものだ。
シリーズ全般を通して、セリフ回しによって物語の進行がなされるという特徴があり、ストーリーを見るというよりも、登場人物たちの語りを延々と聞き続けることが鑑賞の基本になる。
各話は、主人公とメインキャラの絡みが中心になるが、そのエンディングはあまり明快ではないことがほとんどだ。妥協や解決の先送りのままで終わることも多いため、余韻があるともいえるが、どこか消化不良な印象もつきまとう。

そんなシリーズにあって、異彩を放つエピソードがこの『猫物語』だ。

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『猫物語(黒)』と『猫物語(白)』の二編で構成されるこのエピソードは、前作である『化物語』に収められている「つばさキャット」に繋がるお話だ。
主人公の同級生、羽川翼(はねかわつばさ)をヒロインに据え、猫の怪異に関わる事件を描いているのが「黒」で、虎の怪異に関わる事件を描いているのが「白」だ。

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『猫物語』も、シナリオの手法はシリーズ全般に倣ったものだが、羽川翼が抱える問題とそれに起因した一連の事件を通して、彼女が成長する姿を明快に描ききった点が、他のエピソードを凌駕する大きなポイントになっている。

羽川翼は、優等生の典型のような少女だ。
クラスの委員長で、愛らしい容姿を持ち、成績優秀、誰に対しても好き嫌いなく公平に接して、言動にも知性を感じさせる。

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だが、それは表向きの顔であって、彼女の置かれている境遇は想像を絶する過酷なものだ。
羽川翼の家庭は、完全に崩壊している。離婚と再婚を繰り返した両親とは、まったく血が繋がっていないだけでなく、およそまともな意思の疎通もない。そのことは、自宅に彼女の部屋がない、ということに象徴されている。

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家族と言う基本的な社会関係が正常に構築されていない彼女は、それによって、自己のアイデンティティが希薄になっている。なまじ優秀でなんでも自身で解決できてしまうために、他者との交わりも必要がない。他者に対しては、好きも嫌いもなく、何でも(誰でも)受容してしまう。そして、自己の感情に基づくことなく、あたりまえのように正しい言動をとり続ける。主人公をして「本物」と言わしめる彼女は、一点の汚れもない純白な存在だ。

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しかし、彼女もまた感情を持つ生身の人間である。白くあろうとすればするほど、黒い部分は抑圧され鬱積していく。そして鬱積された黒い部分は、ささやかな出来事によって一気に表面化し、それを処理しきれなくなった彼女は……。

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物語は、エキセントリックな怪奇譚をよそおいながらも、羽川翼が問題に向き合い克服していく姿を、ストレートに描く王道の青春ストーリーに仕上がっている。

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エンディングは、痛みや悲しみを伴うもので、彼女や視聴者にとって必ずしも幸福なものではない。けれど、彼女も視聴者も、それしかないと納得できる結果であり、むしろすがすがしい感動がある。

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『猫物語』を見ると、「物語シリーズ」の真のヒロインは、吸血鬼の幼女でもなければ、主人公のツンデレ恋人でもなく、羽川翼なのだと思いたくなるほどの肩入れの仕方だ。まあ、羽川翼はシリーズのなかでいちばん好きなキャラクターなので、なんの文句もないのだが。

残念なのは、シリーズを通して視聴しないとこのエピソードの意味がわからないという仕掛けになっているので、気軽にはお勧めできないことだ。しかも、R指定が必要ではないかと思うほどに、過激な戦闘描写やきわどい性描写も満載だから、万人に勧められる作品でもない。けれどそれらに耐性があり、シリーズに興味があるのであれば、一見の価値がある作品だと思う。

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コメント
520:う~む…… by 山西 サキ on 2014/03/10 at 21:44:44 (コメント編集)

とても面白そうなんですが……
ヒロインもとても素敵なイメージですし、複雑な彼女の設定が興味をそそります。
レンタルできるんでしょうか?
先にお願いしようかとも思ったのですが、シリーズを通さないと意味がわからない仕掛けとか、痛みや悲しみを伴うエンディング、と聞いて躊躇してしまいました。
それしかないと納得できる結果であり、むしろすがすがしい感動がある……とTOM-Fさんはおっしゃっていますが、サキはそうはならないような気がします。
どうしよう。
頭の隅に置いておくことにします。
目についたら借りてきてもらう。そういうスタンスで先にお願いしておこうと思います。
「わかった。まぁ当てにしないことだな」先はそう言って笑っています。
どういう意味なのかな?

521:http://granbellmagictown.blog.fc2.com/ by 栗栖紗那 on 2014/03/10 at 22:20:44 (コメント編集)

物語シリーズの第二期は猫物語(白)だけ見て放置中。
でも、この章は色々な意味で良かったな、と思います。

翼さん自身の境遇へもある程度の折り合いがつけられましたし、阿良々木くんとの関係にもひとまずの決着がついたと思うので。

阿良々木くんとの関係については、表面上変わらないように思えても、やはりどこか内面は違う物になったのだと思います。
ハッピーエンドでないにしろ、この結末には文句の付けどころがありません。

サキさんが躊躇する痛みや悲しみは、彼女へどれだけ感情移入するかで決まるのでしょうけど、阿良々木くんの前提を知っていればそれが納得のいく答えであることがわかると思います。(前シリーズ視聴前提、という意味でもありますけど……)

残りも見ないとな。

522:Re: う~む…… by TOM-F@管理人 on 2014/03/12 at 20:12:52

> 山西サキさん

ほんとうに面白いアニメですよ。
主人公もヒロインたちも個性的で、物語に深みもあります。ただし、記事でも書いたとおり、バトルシーンはかなりグロいですし、あからさまに狙ったようなエロい場面もあります。R指定ではありませんけど(笑)
DVDは、そろそろレンタルに出始めるかなという時期ですね。

作品の構成として、物語を理解するための情報があちこちに散りばめられていることと、エピソードの並びが時系列的に順不同になっているため、一部分だけを見ても理解しにくいと思います。そこが難点ですね。

「まどか★マギカ」のように、見終わって虚無感に襲われることはないだろうと思います、むしろ、ジュブナイル系のせつなさがあって、思わず涙する人もいるんじゃないかなと思います。
先さんは、内容をご存知なんでしょうね、たぶん。アテになさっていいのではないか、と思いますよ。

コメント、ありがとうございました。

523:ありがとうございました by TOM-F@管理人 on 2014/03/12 at 20:16:09 (コメント編集)

> 栗栖紗那さん

お仲間ですね~、嬉しいです。

それにしても、あのエンディングは、ほんとうにお見事でした。結果は予測できていたのに、感動して目頭が熱くなりましたからね。くっそ~、あんな話を書きたいなぁ。
羽川は、いろんな意味で「ホンモノ」ですが、あれで普通の女の子になるのかと思いきや……いえ、なんでもありません(笑)

栗栖紗那さんの書かれた「猫物語」の二次創作、拝読しました。
そういう未来もありえたんだろうなという、素敵なお話ですね。もっとも、羽川LOVEな私としては、ありゃりゃぎクンなんぞに取られるのは、癪に障りますけど(爆笑)

そうそう、あの白黒虎模様の髪、なんで黒く染めちゃうかな~と思いましたが、あのあと復活します。かわいいですよね、あの羽川(笑)

さて、と。物語シリーズも見終わったし、そろそろ五航戦連れて南方海域に出撃するか~(謎)
コメント、ありがとうございました。

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