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カルストとホタルとレトロと

 カルスト(秋吉台)


 約三億年前の赤道付近にあった大サンゴ礁です。
 ガイドは、続けて語った。
 今、見えているのは、全体の六分の一なのです。

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 それは、あまりに茫漠とした広がりと、時の長さだった。

 大きな起伏の草原に、ぽつぽつと灰白色の岩頭が見えている。
 草原を渡る風の音が、喧騒を運び去る。
 いつもイヤフォンで塞いでいる耳に、鴬、不如帰、雲雀のさえずりが心地良い。

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 すり鉢のようなドリーネの下には、地下水が何万年もかけて作り出した、
 地底の迷宮が広がっている。

 一分一秒に追われている毎日が、遠くに感じた。
 ここには、まだ、悠久の時が流れていた。



 ホタル(長門湯本温泉)


 大谷山荘から、夜道を歩いて五分。

 都会の明るい夜に慣れた目には厳しい、漆黒の闇。
 さやかな瀬音だけが響く河原で、
 ほのかに明滅しながら、そよ風に舞う青緑の光たちを見つけた。

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 闇に浮かび上がり、たゆたい、そして流されて、
 ひと夏の命を燃やし尽くす、小さな者たち。
 蛍の成虫の寿命は、七日ほどだという。

 振り仰げば、そこには、満天の星空。
 夏待ちの宵は、ただ静かに更けていく。



 レトロ(門司港)

 レトロとは、懐古という意味だ。
 かつて、新しいものはみな、海からやってきた。

 時の最先端を行く建物と、時を忘れたような建物。
 モダンとレトロが交差し、共存する街。

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 ほんの一昔前、ここは九州の玄関口だった。
 本州から海峡を渡ってきた人々は、この駅から列車に乗り込んで、
 それぞれの目的地に向かった。
 九州鉄道〇哩標の向こうに、ふと思いをはせる。

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 どのような物語があって、どのような思いを抱いて、
 人々は、ここから旅立っていったのだろう。

 この街には、今も、人の思いと新しい時代を運ぶ潮風が吹きぬける。
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コメント
39:レトロってむずかしい by ひゅひゅ on 2012/06/14 at 02:27:19 (コメント編集)

今、東京駅の復元工事が最終段階に入っているようです。開業当初のデザインに戻るのだそうですが、古いのはデザインだけで実態はレプリカなわけです。はたしてこれはどれだけの価値があるものなのでしょうか。古いものが尊いのはそこに宿る人々の記憶が大切だから、と思います。たとえありきたりのベンチであっても、それを見て感慨にふける人もいる筈です。何を残し何を捨てるか、この選択はけっこう難しそうです。

40:Re: レトロってむずかしい by TOM-F@管理人 on 2012/06/14 at 09:06:42

ひゅひゅさん

いつもコメントありがとうございます。

その通りですね。なんでもそうですが、古いものの価値は、そこにあった歴史と、それに込められた人々の記憶や想い、そういうものが持つ重みそのものだと思います。
そして、歴史と記憶は現在と未来において、脈々と受け継がれ、新たに積み重ねられていくことで、その価値を増していくものであると。

外側だけが歴史的な意匠であっても、中身が鉄筋コンクリートでは、たんなる張りぼてです。

「レトロ」という言葉には、「徒に古い物を珍しがり懐かしむだけ」という否定的な意味合いもあるそうです。

41:No title by ゆさ on 2012/06/14 at 23:08:30

蛍、綺麗ですね!こんなにいたんですか。
水がきれいでカワニナもたくさんいる水場なんだろうなあ。

レトロなものは好きです。
ちょっと懐かしいものも、それなりに懐かしいものも、とーーーーっても懐かしいものも好きです。
要するに古い物が好きですねぇ。
ドリーネの見えている部分も見てみたいですが、
見えない部分がどうなっているのか、色々想像してしまいますね☆

42:Re: No title by TOM-F@管理人 on 2012/06/15 at 09:19:56

ゆささん

いらっしゃいませ、ようこそ Court Cafe へ。
いつもおいでいただいて、ありがとうございます。
コメント、とても嬉しいです。

蛍は長門湯本温泉を流れる音信川(おとずれがわ)で見たのですが、まあ、すごかったです。
水は綺麗ですが、カワニナの餌になる有機物もたっぷりとあるという、良い環境なのでしょうね。

古いものには、歴史や人の想いみたいなものが宿っていて、そこが魅力なのだと思います。
私も古いものは、好きですね。とくに、建築物に惹かれます。

ドリーネって、たんなる窪地にしか見えないのですが、その下に鍾乳洞があったりして……とか思うと、童心に返って、ちょっとワクワクしますね。いろいろイマジネーションが広がる風景でしたよ。

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